「元教師のノンフィクション小説 第3章『成功と裏切り』」
センセーのオーストラリア2年目生活は個人事業主として歩みだした年だ。
英語指導者資格の営業もスムーズにいき、順調にお客さんを契約に結べることができた。
その頃になると、彼の能力は最大限に発揮され、さまざまな事業を展開していった。
車関係、ファームなどの仕事仲介、シャアハウス経営
車の整備士やオーストラリア人の仲間、大学生のコウタ君が加わり、さらに事業が盛り上がっていく。毎日この4人で楽しく活動をしていたのである。
そして2年目の生活が10ヶ月経った頃、完全にビジネスが完成したのである。
英語指導者育成業務、日本語指導業務、シャアハウス業務、仕事仲介業務、車販売修理
そしてそれに加えて、本業の学生とアルバイトのラーメン屋も続けて多忙な日々を過ごしていた。睡眠時間も1日2、3時間。そしてついに体が壊れたのである。肺炎を起こしてしまったのである。辛いことは続く。車の整備士だった仲間やコウタ君がビザ切れで帰国をしてしまうのである。またもや仲間を失ってしまった。そしてまだまだ辛いことは続く。神様はどうにも僕に試練を与えるようだ。
オーストラリア人の仲間に業務の全てを託していたシェアハウス経営。最初は自分が行なっていたが、だんだんと忙しくなり、お金の管理や経営を全て任せていたのである。経営赤字が発覚したのは2ヶ月後。一向に増えないハウスメイト。変わることのない整理中の部屋。
この2ヶ月間、いったい彼は何をしていたのだろうか。会社の車を自由に使い、夜な夜な女を連れ込んでは、酒を浴びる。頼まれた車の整備は適当に行い、修理に時間がかかる。
会社の業務も行わない。完全にダメ人間になってしまったのである。そして個人的に貸している$2000。なんだか雲行きが怪しくなってきたのである。
仲間のオーストラリア人が連れ込んでいた日本人の女。この女が全ての元凶。最初から嫌な予感がしていたんだ。みるみる人をダメにしていく女。家賃も払わず、家のこともしない。送り迎えを平気で頼み、人の時間を奪う。仕事を紹介してやったのに感謝の気持ちもないクズな女。この女が全てを変えていった。
気づかないうちに家の名義は僕からオーストラリア人の名前に変わっていた。(後に発覚したこと)
そしてある日、家の鍵も変えられてしまった。オーナーの俺は家に入れないのである。
やられた!ここはオーストラリア。鍵もない。庭に回ってみる。
よかった。幸い庭のドアが開いていて家に入ることができたのである。
しかし俺の怒りは止まらない。その日は何事もなかったように部屋に入り寝た。
そして次の日の朝、オーストラリア人の仲間と話をすることに。
「なぜ鍵を変えた?」
「何がしたい?」
「借りた金は返せるのか?」(日付サイン入りで借用書もある)
「シェアハウスの経営はどうなっている?」
怒りを抑えて彼に聞いた。
そして彼はこう答えた。
「お金?なんのことだい?」
「シャアハウスは僕の名義になっているから文句は言うな!」
と言いながら家の契約書見せてきたのである。
オーナーの名義が僕から彼に変わっていたのである。
完全にやられた。シャアハウスの収入も全て彼の口座にいくようになっていた。
「借りたお金も見覚えはない」
「いったい何のお金だい?」彼は笑いながら言う。
こいつはしらばっくれる気だ。こいつに貸したお金は全てあの女に流れていたのか。
「なら、お前の彼女から頂く」
この後は言うまでもない、激しい殴り合いの喧嘩に発展し、俺は家を出ることになった。
家、仲間、仕事、そう、全てを失ったのである。今でも覚えている。2016年8月3日。人生で1番悔しかった日だ。泣きながら車に乗って、家を飛び出し、一人ぼっちで公園に佇んだ。何度も疑った。これは夢か?ついこの前まであったモノは夢だったのか?何があった?
混乱の中、センセーはぼんやりとするしかなかった。全てを失った。。。途方にくれて僕はホテルへ向かった。
そして1人ホテルでの生活が始まった。