「元教師のノンフィクション小説 『第6章 裏の世界』」
第6章「裏の世界」
ジョーカーは瞬く間に日本人の中では有名になった。最上級のネタをいつでも安く安全に仕入れてくれるからだ。お金のない人用に安く小分けにしてあげたり、車がない人には届けたり、彼は「幸せ配達人」とも呼ばれるようになった。
では一体彼はどこからそれを仕入れて来るのか、少し覗いてみよう。
ジョーカーがオーストラリアへ降臨して一年が過ぎた頃、ジョーカーはヒッピーの街をウロついていた。今日もいいネタがないか仕入れにきたのだ。もう一年も通っている。地元の売人たちはほとんど顔なじみだ。こいつらの持っているネタは大したことない。というかこっちのほしい量を準備できないくらいだ。毎回探すのに苦労する。
半年前のギャングの一斉摘発で供給が一気に減り、そのせいでネタの単価も上がり商売は上がったりだった。
今日はいいネタがないから退散でもしようとしたとき、ジョーカーは1人の日本人に出会う。たかしさんという人だった。見た目は爽やかなヒッピー。この街でたまにコロッケを販売しているらしい。
「久しぶりに日本人見たね~」
「ネタ探してるの?」
第一声でジョーカーの心が読まれたのである。
「はい。でもなかなかいいのなくて。。。困ってるんですよ。」
彼はジョーカーの耳元でにこう囁いた。
「うちにおいで、良いのあるから。」
そこから車で30分ほど山を登ったところに一軒の手作りハウスがあった。
そこでは家族5人、奥さんと子ども3人で暮らす生活があった。
東京ドーム10個分の広大や山の敷地。家は全て手作り、山を切り崩し、その木で建築。風呂やトイレも手作り。庭には畑が広がり沢山の野菜や果物が育つ。まさに自給自足の生活であった。この家に住んで5年になるそうだ。オーストラリアへ来て15年。たかしさんもジョーカーと同じく15年前に夢の野望のために日本から来た戦士だったのだ。
まさにジョーカーにとって衝撃的だった。オーストラリアに来て一番の衝撃だった。今までにあったことのないタイプの日本人。そして永住権を持ち夢の最果てを見ている人。ジョーカーの心は強く惹かれ、たかしを仙人と呼び、慕うようになった。ここからは付き合いが盛んになり、月に2、3回は会うようになり家族とも仲良くなっていった。
あっという間に付き合いは1年も経ち、子ども達もジョーカーに懐き「ピーターパン先生」とよんで慕っていた。ジョーカーはここに来るたびに子どもたちにお土産をあげて、遊びながら色んなことを教えていたのである。子どもたちも毎回来るのを楽しみしていて、ジョーカーの持つピーターパンのタトゥーを見てそう呼ぶのであった。